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赤禰の花の横に既に一輪の花が置かれていた

赤禰の花の横に既に一輪の花が置かれていた。どこからか採ってきたような名も分からぬ花が一輪。

 

 

「そう。毎月月命日には来るようにしちょるんやけどいつも俺より先にこうやって一輪だけ置いてあるそ。」

 

 

宮城を慕ってた女かと思ったがそれにしては一輪だけで味気ないし誰だろうといつも疑問だった。

 

 

「今日は月命日やったんですか。」 【你一定要知的植髮流程】解答植髮失敗風險高嗎?植髮痛嗎? -

 

 

「うん,命日は来月なんやけど自分の家族を死に追いやった奴に宮城さんの親族も会いたくないやろうから月命日だけ。

忘れもせん……何の因果か切腹した日が宮城さんの誕生日やった……。」

 

 

神様は意地悪な事をすると三津は思った。それから一輪の花をじっと見つめた。

 

 

「武人さんは毎月謝りに来てはるんですか?」

 

 

「そうやな……。」

 

 

自分の罪悪感を軽くしたい独りよがりなモノとは分かっているがここに来て謝り続けるしか償い方が分からない。

 

 

「この方は毎月何を伝えに来てるんですかねぇ。」

 

 

「さぁ……。」

 

 

一輪の花の主を突き止めた所で宮城を偲んで思い出話を語れるような立場にないし,顔を合わせて気まずくなっても困るから探す事はしなかった。

 

 

「私も新ちゃんが死んだ時似たような事してたんです。自分だけ生き残った償いに毎日毎日足を運んで土下座して泣いて謝ってました。

もしかしてこの方も宮城さんへ謝りに来てるのかなって。」

 

 

自分と同じぐらい宮城に償いの気持ちを持っている人物はと考えて赤禰は気付いた。

 

 

「高杉……か?」

 

 

「かなぁ?って思いました。一見そんな事しなさそうに見えますけど人一倍仲間想いですからね。ここの誰か一人でも欠けたら泣くって言ってましたし。」

 

 

そんな高杉が自分の身代わりとして仲間が死んだとなればそれは心にかなり深い傷を残したに違いないと思う。「私の勝手な予想なんでホンマに高杉さんかどうかは分かりませんよ?でもここに来る途中に摘んできた花ってのが高杉さんっぽいと言うか。」

 

 

三津はしゃがんでその花を見つめて笑みを浮かべた。

 

 

「もし高杉さんなら高杉さんの気持ちも軽くしてあげんとなぁ……。」

 

 

……何て慰めるそ?」

 

 

赤禰もその隣りにしゃがんで手向けた花を見つめた。

 

 

「慰め……とはまた違いますかねぇ。私そんな偉そうな事出来るほどの人間ちゃうんで。

思ってる事を独り言として喋るだけです。」

 

 

ふふっと笑う三津の横顔を赤禰は黙って見つめた。それに気付いた三津はあんまり見られると照れますと俯いた。

 

 

「私は宮城さんと面と向かって目を見て話した訳やないんで全く分からへんけど,宮城さんは高杉さんを恨んではないと思います。

多分自分の命と引き換えに高杉さんに希望を託したんちゃいますかね。恨みやなくて希望を遺して逝きはったって思いたいです。」

 

 

「希望?」

 

 

「死と希望を結びつけるとか支離滅裂なんは分かってますけど……。高杉さんが生き残るなら長州の行く末は約束された。だから死を受け入れる。だからしっかり皆を引っ張れよって言ってくれたりしてへんかなぁ……って言う都合のいい話です。」

 

 

赤禰は切腹を言い渡された時の宮城の姿を鮮明に思い出した。

 

 

赤禰悪いな。面倒な仕事ばっか遺して。出来る限りの事はしちょくけぇ後は頼んだ

 

 

後は頼んだと言って宮城は赤禰に笑いかけた。それからせかせかと身の回りの整理を始めた。

愚痴も不満も口にせず目の前にある死を受け入れていた。

 

 

『後は頼んだ……俺は託された……。』

 

 

文句を言ったって上の決定は覆らないのを知ってるから不平不満を言わなかったんじゃない。きっとこの死も自分の役目だと受け入れたんだ。

 

 

『宮城さん……俺と高杉に希望を持ってくれとるんか?』

 

 

赤禰は墓石に手を当てた。答えて欲しい。宮城の口からそうだと言って欲しい。

 

 

『多分これからも弱音吐いたり落ち込んだりすると思うけぇそん時は夢にでも出てきて叱ってくれや。』

 

 

は?お前の隣りにしっかり見て叱ってくれる家族がおるやろが。やけぇ紹介しに来たんやないんか

 

 

その声にハッとした。隣りの三津を見れば不思議そうに首を傾げている。

 

 

「今……声が……。」

 

 

それと同時に頬に涙が伝っていた。三津はそっと立ち上がって赤禰の背後に回った。

 

 

「見てませんから思うままにどうぞ。」

 

 

座り込んでしまった赤禰の背中に三津は背中を預けて座り,そのまま静かに時間を過ごした。

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